沖縄で古くから活用されてきた、上品な香りが特徴である「月桃」という植物。
さまざまな健康効果があるだけでなく、アンチエイジングにも広く活用できる効能をもちます。にもかかわらず、美容に詳しい方の間でしか知られていない「月桃」の驚くべき魅力と効能についてお話しています。

月桃とは、ショウガ科ハナショウガ属の多年草植物で、台湾や南アジアなど熱帯・亜熱帯地方に自生しています。
日本では沖縄や九州、屋久島、種子島の野山で見ることができます。
名前の由来は、花のつぼみが桃のような形をしているから、台湾の現地名から、など諸説あるようです。

月桃の葉は長さ40～60cm、幅15cmほど、濃い緑色で光沢があり、長楕円で先端が尖り、下端は鞘となり茎を包んでいます。
初夏になるとかわいらしく可憐な白い花を咲かせ、提灯のように垂れ下がります。
7月頃には蘭のような黄色い花になり、秋のはじめには赤茶色の実をつけます。

沖縄では、「サンニン」、「シェルジンジャー」などと呼ばれ、月桃の葉に包んで蒸されたお餅（方言名：ムーチー）は、子どもの成長を祈願する伝統行事にも用いられ、神仏へのお供え物としても使われています。
独自の香りが特徴で、精油やコスメ、お茶、アイスクリームのフレーバーなど様々なものに使われています。

月桃は沖縄で古くから漢方として使われてきた植物。

細胞を傷つける活性酸素を除去したり、抗菌・抗炎症作用を持っていたりとその効果はさまざま。それでは、月桃が秘める美容・健康効果についてご紹介していきます。

抗酸化力が高く、肌を若々しく保ちます

月桃には100g中1630mgものポリフェノールが含まれており、その量は赤ワインの約34倍、ブルーベリーの約6.7倍ともいわれています。
ポリフェノールには活性酸素を除去する働きがあり、エイジングケア効果を期待できる成分。
細胞が酸化するとコラーゲンなどを硬くして、肌の弾力が低下し、シワやたるみなどの原因になることから、ポリフェノールはエイジングケアに欠かせない物質です。
さらに、肌を炎症と外的刺激から守る作用も持つとされていることから、アンチエイジングと肌荒れ対策の両方への効果も期待できます。
紫外線ダメージから肌を守る作用もあるとされていることから、肌をトータルで若々しく保つために大きな効果を発揮してくれる植物成分です。

参考文献：小林静子,紫外線B波照射による皮膚障害とその予防・治療,薬学雑誌, 126(9),677~693(2006)

参考文献：早田邦康,高ポリアミン食による哺乳類のアンチエイジング,日本食品化学工学会誌, 61(12),607~624(2014)

血管の老化を防止し、肌のシミ・たるみを防ぐ

月桃に含まれる血管の老化を防止する物質は、「タイツー活性化物質」というもの。タイツー活性化物質には、「アペリン」という物質が現れることを促進させ、その働きにより年齢とともに脆くなる血管を拡張する作用があると認められています。

肌と血管には深い関係があり、肌に張り巡らされている血管が老化し、ゴースト血管となることで肌細胞へ栄養や酸素を充分に与えられなくなると、シミやたるみなどの肌老化が発生しがちに。シミ・たるみを防ぐためには、血管から若々しく保つことが大切ですよ。

参考文献：高井義美. 研究領域名：がんにおける細胞・組織システムの破綻 文部科学省.（参照 2020-07-21）

参考文献：澤根美加,大田正弘,山西治代,本山晃,高倉伸幸,加治屋健太朗. 皮膚老化において重要な役割を担う血管・リンパ管,粧技誌, 46(3),188~196(2012)

抗菌・抗炎症作用で肌トラブルを予防

月桃は抗菌作用が高く、ニキビやあせも、かぶれの予防にも使用されています。特に、月桃の葉から抽出されるエッセンシャルオイルは、抗菌・防虫作用があるとされ広く活用されるもの。
抗炎症作用もあるため、花粉症などのアレルギー症状やアトピーの症状を抑制する効果にも期待でき、荒れやすい肌を落ち着かせ、肌トラブルを防ぎ、美肌を保ちやすくします。

参考文献：箕内誠二. 新天然繊維『月桃』の商品化 J-STAGE.（参照 2020-07-21）

天然精油の香りでリラックス＆リフレッシュ

月桃の精油は微かに甘みのあるウッディでハーバルなスッキリ感のある、凛とした香りでリラックス・リフレッシュ効果があります。
山梨県で行われた実験によると、月桃にはリラックス状態を司る自律神経である「副交感神経」の働きを高める効果があると報告されました。
特に女性に対する効果が高く見られたことから、サイクルによって揺らぎやすい女性にとってうれしいアロマです。

参考文献：降谷英成,リゾートホテルにおけるアロマセラピーのリラクセーション効果,aromatopia, 17(3),(2008)

高血圧予防にも

月桃にはポリフェノールの一種であるケルセチンを多く含み、血中の脂肪の排出を促し、血液をサラサラにする効果があると言われています。
ケルセチンの摂取量が多い人ほど、拡張期血圧が低くなる傾向があるとの報告もあり、月桃が血圧低下に及ぼす影響は高いと考えられます。
そのため月桃は、古くから血圧を下げる効能がある漢方薬として用いられてきました。

参考文献：小堀真珠子. ケルセチンの生活習慣病予防機能 農研機構.（参照 2020-07-21）

ダイエット効果も

月桃に含まれているポリフェノールの一種であるタンニンは、脂肪の吸収を抑制する働きや、血流促進作用があるため、ダイエット効果にも期待ができます。
クリの皮に含まれるタンニンで実験をしたところ、体内での脂質の吸収を抑制する働きが見られ、中性脂肪の濃度が低下したことにより、メタボリックシンドロームや肥満に効果が期待できると報告されました。

参考文献：川﨑健司,白水智子,勝井真紀. クリ皮から抽出されたポリフェノールの脂質吸収抑制効果 J-STAGE.（参照 2020-07-21）

咳止めにも使える！

月桃はショウガ科の植物で、ショウガと同じように、咳止めや喉の炎症を抑える効果にも期待できます。
月桃の葉に含まれる成分の、優れた殺菌消毒効果と、ポリフェノールによる抗酸化作用、抗炎症作用によって咳を抑えやすくなります。

多種多様の優れた効果を持つ月桃。
例えば沖縄では、子供の成長を祈願する伝統行事で「ムーチー」という月桃の葉に包んで蒸されたお餅が食されていますが、全国的にはどのように使われていかというと、その香りの良さを活かして、アロマオイルや化粧品に使われていたり、健康効果を活かして健康食品になっていたり、抗菌・防虫効果を利用して虫よけ剤として活用されていたり…と、実はさまざまなものに利用されています。
ここからは、意外と身近な月桃の使いみちについてご紹介していきますね。

アロマオイルや化粧品

先にお話したように、リラクゼーション効果のある月桃は、アロマオイルとしてマッサージなどに利用されています。
その効果に加えてアンチエイジング効果や肌荒れ予防にも効果が期待できることから、化粧品としても広く活用されている成分。
化粧品に配合されていれば、リラクゼーション効果と美肌効果の両方を一度に期待できます。

お茶や健康食品

月桃が使われているものとして、最も有名なものが「月桃茶」かもしれません。
沖縄では琉球王国時代から長く親しまれていて、月桃の香りを楽しみながら抗酸化成分を摂取できるとして、健康志向の方に注目を集めているお茶でもあります。
月桃のポリフェノールをあますことなく摂取したい方には、月桃茶や健康食品としていただくことがおすすめです。

虫よけや消臭剤

抗菌・防虫作用のある月桃は、それらの効果を活かして、虫よけ剤・消臭剤としても利用されています。
沖縄では古くから「ムーチービーサー」というお餅の防腐・防虫剤として使用されてきた歴史も。
また、月桃の精油に関する研究では、黄色ブドウ球菌や大腸菌O-157の抑制に効果があったという報告もありました。

沖縄では広く活用されている月桃。
健康・美容効果に加え、抗菌作用・防虫作用・高血圧予防・リラクゼーション作用など、さまざまな優れた効能を発揮する植物です。
私たちの身近では、お茶や健康食品、防虫剤などとして活用されていますが、その美肌・アンチエイジング効果を活かした化粧品も要注目。
特有の上品な香りを楽しみながら肌のお手入れをすれば、身も心もリフレッシュできそうですね。
化粧品やお茶、健康食品など、月桃を使った商品を見かけたら、ぜひご自身でその効果を体験されてみてはいかがでしょうか。